金田風アンプ No.267の製作 ⑧

投稿者: | 2021年5月3日

アンプが完成しました。

No.239アンプの完成に約3年を要したことを考えると、今回はとても早く完成できました。
前も同じことを書いたようですが、一度通った道で、殆ど迷うことなく製作できるようになったからでしょうか。
電源部がないのも大きいことです。

ただ、やはり完成までに一山越える必要がありました。
今回も私には予想外のことが起こり、原因が分かるまで右往左往しました。
先達の方々には幼稚なトラブルを披露して申し訳ないですが、メモとして記したいと思います。

それは、アイドリング電流を調整する時の出来事です。
スピーカー端子につないだテスターの表示も確かめながら基板上のVR2を回しますが、いくら試みても電流計の針が50mAから上がりません。

もしかして発振か、と思いましたが、基板で熱くなっている部品もなさそうで、保護回路が動作する様子もありません。
金田アンプの組立経験も乏しく、なにより根本的に電気的知識欠如の中、思いつくままにあれこれ試みました。
定電流回路の抵抗値の変更や、初段2SK117BLを別のIdss値のものに付け替えるなどなど。
しかし、何をやってもアイドリング電流は50mAで頭打ちです。

音は出るのかと、恐る恐るNo.257プリアンプとスピーカーをつないでレコードをかけてみると、音は出ました。
でもそれは、高音はまだしも、中、低音は割れていて、音楽鑑賞という状態ではありません。

こうして数日の間、ずっと思案していましたが、「分からないときは原点に立ち返ろう」、そうすることにしました。
原点、つまり私の場合、金田風アンプの製作は製作記事の回路図、基板配線図をもとにPCBEでプリント基板用の原図作成から始めます。
原図ができたら、次にPCBEの確認図印刷を行い、印刷された確認図に各部品の記号を書き込み、図上で一度配線作業をします。
そして、回路図と確認図の双方をマーカーでチェックしながら照らし合わせて、間違いがないかよく確認します。
このように作業を終えて、原図が回路図を正確に写し取っていると確認出来たら、プリント基板業者に発注します。

そうしてできた確認図、組み立て後仕舞っていたそれを取り出し本体基板と見比べ眺めているうちに、気付きました(!)。
保護回路の過電流検出のところで、0.1Ωと1KΩの取り付け間違いをしていました。

次の写真は「No.267の製作 ②」に掲載した時のものです。

これか、と思い、早速修正すると、ドンぴしゃり、150mAをクリアすることができました。

修正後の基板です。

基板組み立ての際、部品の取り付け直前まで「上下で対称だな」と思っていたのに、どう思い違いしたのでしょう。
金田先生の「保護回路は決してトラブルがあってはならない回路である。似たような回路が並んでいるので、Trの型番、電極に十分注意して配線する。配線後には最低2回チェックする」との言葉を今一度かみしめました。

こうして音楽を奏で始めたNo.267アンプの姿です。
写真では青色LEDがともっているだけの、うしろにタンノイらしいスピーカーを背負ったいつもの風景です。
もちろん、まだタンノイにつなぐ勇気がないので、写真には写っていない床に置いた小型スピーカーで確かめています。
No.239アンプも素晴らしいのですが、バッテリードライブだからでしょうか、さらに解像度が上がったように思います。

アンプ完成後いろいろとレコードを聞いています。その中でもベーム指揮のモーツァルト「ポストホルン・セレナーデ」を一段と気に入りました。
モーツァルトが子どものころ、父親と諸国を馬車で旅する中で聴いた郵便馬車のホルンの音、それを懐かしく思い出しながら作曲したのでしょうか。モーツァルトの作品の中でも楽しそうな曲調がとても親しみ深く、彼の人間味に触れる思いのする作品です。
第6楽章でポストホルンの音が右手奥の方から聞こえてくるあたり、No.267アンプではホルンの位置もより鮮明に感じられます。

そして金田先生の試聴会での定番、ストラヴィンスキー「火の鳥」。
こんな小型のスピーカーからと思うほどの分厚い打楽器の音、そして煌びやかな弦、管楽器の音色にNo.267アンプの実力を実感しました。