金田風アンプ No.286の製作(DS-E1用プリアンプ) ⑦(付録)

前回、光カートリッジが再生する音の魅力を記しました。

リスニング環境として、DENON DL103+カートリッジIVC+金田風プリアンプNo.257もあり、これもまた別の魅力を持っているので使い分けていきたいと思っています。

さて、金田風プリアンプを調整する時、……実体配線図中のa、bで示されたランド間に10Ωの抵抗を配線。調整用VRを動かして抵抗両端の電圧を測定。所定の電圧が得られたら抵抗を外し、a、b間をジャンパー線で配線。……という作業をします。

私の場合、調整のたびに抵抗を付けたり外したり、ジャンパー線を付けたり外したりしているうちに、ランドが半田の熱で剥がれ基板が台無しになることがよくあります。

それを回避する工夫として、1枚目の写真のようなコードを用意しました。
写真の上側、黒のテープでカバーした部分に、小さな基板に赤と黒のナイロンジャックをハンダ付けして固定し、端子間に10Ω抵抗をハンダ付けしたものを収めています。
各端子からコードを伸ばし、その先にメスコンタクトピンを圧着してソケットにセットしています。
このコードを仮に調整コードと呼ぶことにします。
写真では使用方法の説明として、赤と黒のナイロンジャックにテスターのニードルを差し込んでいます。

2枚目の写真の〇で囲んだ部分のように、基板のランドa、b間にヘッダーピンを取り付け、普段は接続用ソケット(ミニコードにメスコンタクトピンを圧着しソケットにセットしたもの)を差し込んで接続しておきます。
調整の時は接続用ソケットを抜いて、調整コードのソケットをセットします。
調整が済んだら調整コードのソケットを抜いて、接続用ソケットで接続します。

以上は生活の智恵のような実験の報告でしたが、説明が下手なことご容赦ください。

上の写真はヘッダーピンから接続用ソケットを取り外した状態

金田風アンプ No.286の製作(DS-E1用プリアンプ) ⑥

製作記事の通りにカートリッジ周辺の電圧を測定し、ほぼ記事に準じた電圧を確認しても、なんとなく緊張感があります。
他のカートリッジと違い光カートリッジには電流を流すので、「スイッチを入れた。即こわれた」を想像してしまうからでしょうか。

いよいよカートリッジをプレーヤーにセットして、電源スイッチを入れます。

カートリッジ前面に緑のランプが点きました。これだけでほっとしました。

今までカートリッジが光るのを見たことがなかったので、少々不思議な感じです。

肝心の「音」は。

インターネットの記事を読むと「マスターテープの音」とか「レコードから出てきた音とは思われない」、「全く新しい体験」などと書いてあります。

私の場合、その再生音は楽器の一つ一つがつぶさに聴き取れるほどに鮮やかなものに感じました。

カメラで例えれば、ファインダーを覗きながら絞りを更に絞り込むと、画面の隅々までピントがピタッと合う感覚がありますが、光カートリッジの再生音はそれと良く似た感覚をもたらしました。

その、音のベールが取り去られた再生音を聴くのが楽しくて、次から次とレコードを聴いてしまいました。
どんな言葉を選んでも表現しきれないこのレコードを聴く楽しさ、光カートリッジの魅力はこれに尽きるのではないかと思います。

金田風アンプ No.286の製作(DS-E1用プリアンプ) ⑤

解説記事にしたがって調整をしました。

今回の調整作業は今までの金田風アンプ工作の中で一番スムーズだったように思います。

フラットアンプ基板については、両chともI0の20mAはVR2の回転範囲内で得られ、V0もVR1の中点からそれほど動かさないで済みました。

イコライザーアンプ基板は、Tr3のソース抵抗を記事通り(R.ch430Ω、L.ch510Ω)とすると、VR2の回転範囲外となりました。
ソース抵抗を半固定抵抗に付け替えて実測し、ソース抵抗をR.ch120Ω、L.ch150Ωとしました。
その結果、VR2の回転範囲内で調整することが出来ました。
2SK43は手持ちのランク3のものを使いました。

その前に、バッファのVDCは両chとも23mVほど出ていたので、これも56Ωの抵抗を100Ωの半固定抵抗に付け替えて実測すると、40Ωで0mVになったので近い39Ωの抵抗に取り換えました。(VDCは±2mV以内)

上記は、素人の私が考えて進めた調整手順で理論的裏付けはないものです。
参考にされる場合は、あくまで自己責任でお願いします。

金田風アンプ No.286の製作(DS-E1用プリアンプ) ④

基板をケースにセットし、配線もやり終えました。

穴あけが苦手な私はケース作りにかなりエネルギーを使うので、いままでのアンプはともすれば作業が遅れがちでした。

以前、組立報告をした「No.270 サブミニチュア管プリアンプ」が最近は休眠状態なので、今回そのケースをリユースすることにしたら一気にここまでこれました。

金田風アンプ No.286の製作(DS-E1用プリアンプ) ③

部品を基板にセットしました。

SEコンデンサーの33000pFと6800pFは入手できていないので、ディップマイカを使っています。
33000pFはそのものではなく、20000pFと13000pFを組み合わせたものです。
そこまでこだわらなくてもと言われそうなほど、場所をとっています。

ニッコームも欠番が増えてきて、一部フラット電子の抵抗を使っています。
今回300KΩはニッコーム、フラット電子とも無かったので、デールの金属皮膜抵抗を使いました。

写真で基板が不ぞろいに見えるのは、基板の半田面にも部品を取り付けていて、そこが持ち上がっているからです。

撮り終えてこの写真を見ていて、1か所部品の取り付け間違いに気づき修正しました。

金田風アンプ No.286の製作(DS-E1用プリアンプ) ②

部品集めはほぼ完了し、基板ごとにビニール袋に分け終わりました。

一番右の袋が薄っぺらく見えるのは、実は空き袋なのです。
レギュレーター基板とバッテリーチェック基板を、ハンダ付け練習を兼ねて組み立ててしまいました。

FET等は別袋にしています。
差動アンプ用FETはIdssを測定してペアマッチングします。
2SJ103BL、2SK215も念のため測定し、ペアにしておきます。

33000pFと6800pFのSEコンデンサーは現在のところ入手できていませんので、多分ディップマイカまたはフィルムコンデンサ―を使うことになると思います。
部品表には、WIMAの0.033μFなどを購入済なのでチェックを入れています。

金田風アンプ No.286の製作(DS-E1用プリアンプ) ①

光カートリッジDS-E1用のアンプ製作を開始することにしました。

注文していた基板が仕上がってきました。
こうして並べると早く組み立てて音を聞きたくなります。

イコライザー基板は、最初2SK97を雑誌記事と同様、足を広げて装着する方式で作図しました。
しかし、貴重な2SK97を考えると「勿体ない精神」が発動し、ソケット方式に変更して発注しました。

SEコンデンサー33000pFと6800pFは手に入れたいので、期待を込めてランドの間隔をSEコンデンサー用の寸法で描きました。
手に入らない場合は、ディップマイカか他のコンデンサーを採用することになります。
それを考えると、各種サイズ装着可能なパターンにすればよかったかなと思っています。

バッテリーチェック基板は他のアンプからの流用です。
2つの回路の内、1回路を使います。

近況

昨年の2月以来になります。 お久しぶりです。
いろいろなアンプを作ると言いながら、この間アンプ工作に進捗はありませんでした。
期待にそえなくてすみません。

さて、先日ふと思いついたことがあります。
それは、2SK117や2SK246などのFETの足が、1ピンからDSGの順にならんでいる場合、それを180度ひっくり返しても、1ピンのDがGに、3ピンのGがDになり、同じように使えるということですが、本当にそうなのかということです。

そこで、手持ちのNo.267アンプ、「SiC MOS-FET パワーIVC」の初段のTr1とTr2を取り出して調べました。

金田先生は製作記事で「差動アンプ2SK117BLは2個の特性が揃っているほど差動アンプとしての性能がより発揮できる」と記し、記事の測定回路で「Idssの差が0.1mA以内のFETを選んで、ペアマッチングする」としています。

私は手持ちの2SK117BLを測定して、Tr1のIdssにぴったり合ったTr2を見つけ、ペアマッチングしたつもりでいました。

そう言えば、Tr2は熱結合するため180度向きを変えて接着していて、Tr2として使っている面のIdssは未測定だと気づいたのです。

今回、それぞれの実際の装着形態に従い測定しなおすと、若干の誤差を持った組み合わせだったと分かりました。
幸い、Idssの差が0.1mA以内に収まっていたので、再使用することにしましたが思いがけないことでした。

この機会に手持ちの2SK246BL、2SJ103BL、2SK170BL、2SJ74BLで、表裏両面の値を測定してみると、ほぼ同じ値を示すものもあれば、若干違っていたり、中には大きく違うものもありました。

Idssは裏表で同一の値になるとは限らないことを知り、今後は熱結合をするときは両面を測定して判断しようと思った次第です。

これについて「接合型FET SD互換」などでネットを検索すると、既に話題にしている先人の方々がいました。
金田アンプ入門がごく最近の私は、先人の「気づき」に今更ながら追いついた感じです。

ところで、金田先生は「MJ無線と実験」2022年12月号と2023年1月号に「No.286 光カートリッジDS-E1用プリアンプ」を発表されました。

これを読んで、後先を考えずDS-E1を手に入れてしまいました。

アンプ作りはこれからなので、今は眺めるだけです。
プリント基板原図も仕上がり、部品もぼちぼちと集めています。

金田風アンプ No.281の製作(DAC) ③

「MJ無線と実験」誌2023年2月号で発表された「No.287 最新型D/Aコンバーター」。
3月号ではその後編が掲載される予定でしたが、「音質的にまだ伸びしろがあると判断し成功後に発表する」とのことで、第3世代光カートリッジ用アンプの記事に変更されました。

予告の通りであれば、今月号で金田先生の「本機の音」という感想が読めるはずと心待ちにしていたので、少し残念に思いました。

そうなると、面白いものでBD34301EKVを使ったDACはどんな音を再生するのか、自分で確かめてみたくなりました。
それが搭載されているDACを探すと、中国のSMSL社から発売されているD300という商品を見つけました。

ネット上の使用感想では、「音が柔らかく豊かで、それでいて一音一音の輪郭が明確。デジタルっぽさがない、いわばアナログ的な音色」と評判が良いようです
また機器を増やすのかと思いながら早速注文しました。

(S.M.S.L社のHPから引用)

あちこちの感想ブログでは、約100時間ほど動作させてエージングが進むと本領発揮とのことで、商品が届いてすぐに音を聴いてみると、たしかにややざらついた地味な音色と感じました。
そこで、家にいる間は常に電源をいれるようにしていると、100時間も待たず最近はとてもなめらかな音色になってきたようです。

音に芯があるのに柔らかく豊かという感想はいかにもその通りと思われ、再現される演奏空間もいままでのDACと比べて一回りも大きく感じられます。
久しぶりに掘り出し物に巡りあえたような感触と、こういう音を求めていたのではとの思いを楽しみながら、時間のある限り音楽鑑賞しています。

今回は「No.281の製作(DAC) ③」というタイトル違いの内容で申し訳ないですが、今後PCM再生に加えて金田式DACでのDSDネイティブ再生にも挑戦したいと考えていますので、ご理解をお願いします。

金田風アンプ No.281の製作(DAC) ②

「MJ無線と実験」誌2023年2月号で発表される「No.287 最新型D/Aコンバーター」は、ローム社製オーディオDACチップBD34301EKVを搭載したDACのようです。

BD34301EKVを使うとなると周辺回路が複雑なので、PCM1794のようにIC変換基板を使いながらサンハヤトのユニバーサル基板AT-1Sに落とし込む、といった方法はとても難しいように思われます。

そのため、この部分は(嵩張りますが)ローム社が併売の評価基板を使ったりするのかなと思っていたら、どうやら金田先生を支える先達の方が製作する基板を採用することになったようです。
DSC基板以降はそのままで、それより前の部分をこの基板に置き換える方式らしく、詳しいことは10日の本誌発売を待たねばなりませんが、これで金田式DACもDSDネイティブ再生を実現できることになりました。

また、ESSテクノロジーや旭化成エレクトロニクスなどのDACチップを搭載したDAC基板が世に数多く販売されていますので、一工夫は要るでしょうが、それらと付け替えて楽しむ可能性も出てきたのではないでしょうか。


(出典:ローム社HP)