金田風アンプ No.281の製作(DAC) ①

前回「金田風アンプ No.279の製作(6RR8A) ①」を投稿してからほぼ1年が経過してしまいました。

投稿のあと、参加している懇親会の幹事役が輪番で回ってきたり、家事が増えたりして少々忙しくなったことと、例えばSEコンデンサーなどのように、部品が入手しづらくなってきたのをいいことに、アンプ製作という集中を必要とする作業から遠ざかっていました。

それだけでなく、「金田風アンプ No.270」(真空管プリアンプ)が結構発熱したので、今度の「No.279」も熱くなるのではと思ったりして、製作の順番を後回しにして今日まで来てしまった次第です。

そうこうする内に、「MJ無線と実験」誌2022年2~4月号で発表された、No.281「USB S/PDIF 対応 D/Aコンバーター」にも関心が向きだしました。

最近は金田風アンプを使ってレコードを聴くことと、USB-DACを通して真空管アンプでハイレゾ音楽を聴くことが半々くらいです。
金田風DACとアンプでハイレゾ音楽を聴くことができたら良いのにと思っていたこともあり、金田式DACはDSDネイティブ再生はカバーしていないのを承知の上で、早速基板原図を書いてPCBWAYに発注しました。

仕上がって届いた基板の一部です。

と、ここまで書いていると2023年1月号の予告で、次号では「最新型D/Aコンバーター」が発表されるとありました。
どんな機能を盛り込んだものが発表されるのか、No.281のDACは基板まで作ってしまったのですが、更に期待して待つことにします。

金田風アンプ No.279の製作(6RR8A) ①

「MJ無線と実験」誌の2021年10月号から、「DCアンプシリーズNo.279 バイポーラTrドライブ SIC MOS-FET パワーアンプ」の連載が始まりました。
「今までは音は良くても入手困難なものはできるだけ避けてきたのが、今回はそのような制約を排し理想に近い構成のアンプを追求する」(記事のリード文から)とのことで、半導体アンプ、404Aハイブリッドアンプ、Nutubeハイブリッドアンプの3種のパワーアンプが一挙に発表されました。

私としては、すでにNo.267という音の良い安定感のあるパワーアンプを手に入れています。
だから特に動く必要もないのですが、真空管を使ったNo.270ハイブリッドプリアンプで金田風アンプの新しい魅力を知りました。
さらに、WE404Aの同等管のNEC6RR8Aも、ずっと以前に購入して持っている以上、今回のパワーアンプを見過ごすわけにはいかない、この真空管をそろそろ使わないと何時使うのかという気持ちになりました。

そこで、早速404Aハイブリッドアンプのプリント基板の原図を作成し、発注の手はずを整えました。

発注先はいつものFusion PCBでよかったのですが、近頃は仕上がりに少し時間がかかるようになり、時には発注から到着まで一か月を要したこともあったので、この際新しい業者を試してみることにしました。

ネットであたってみるとPCBWAYという業者の評判がよさそうです。
値段的にもFusion PCBと変わりないので、今回はこちらに発注することにしましたが、一つ気になるのは私のようなPCBEでの注文例が見当たらないことでした。
現在原図作成ソフトはEAGLEやKiCadが多く使われているようです。
PCBEで作ったガーバーファイルはどうなのかと心配しましたが、それは杞憂だったようで、すんなりと受け付けてもらえました。

そして、発注してから1週間ほどで基板が届きました。
仕上がりも満足のいくもので、なにより、10枚単位の注文に1枚おまけがつくなど、きめ細やかな対応が心地よく、次回もPCBWAYと決めました。

金田先生は真空管を基板に接着剤で固定し、直接足に半田付けする方法を採用していますが、私の所有する6RR8Aは2本しかない上に、長期保管の間に足も黒ずんだりしていて一発で動くかどうかも心配です。
それで、ソケットを使うことにしました。
さらに、今後直接配線を試みることもあるかと、真空管の足を収められるよう穴を開けてもらっています。

金田風アンプ No.270の製作 ⑨

前回、SAOCの2SK43をランク3のものに装着し直したことを記しました。
その変更で安定したと思いましたが、時々片方のチャンネルのSAOCの設定ポイントが外れてしまう現象が起こります。
そこで、ネットで2SK43のランク4のものを見つけて取り寄せ、交換してみました。
測定結果はIdssが8.3mAのもので、現在、設定ポイントがずれることもなく安定しているようです。

こうして、他にも部品を付けたり外したりするうちに、基板の半田ランドが一部剥がれたり全体に汚れが目立つようになりましたので、基板を作り直すことにしました。
レベルシフトダイオードや入力抵抗を取り入れ改良した原図を作成し、基板製作を依頼しました。
入力抵抗は「No.270の製作 ⑦」で記したものです。
(イコライザーIVCに56Ω、ラインアンプ&ヘッドフォンアンプに5.1KΩを付加)
2週間ほど待って、先日到着した出来上がり品が以下の写真です。

レベルシフトダイオード(①)、入力抵抗(②)の位置を写真に書き添えました。

部品の付け替えはこれからの作業として、このアンプで、手持ちの「ベーム指揮 モーツアルト交響曲全集」を聴くことにしました。
モーツアルトの交響曲、よく考えると、後期のものは何度も聴きましたが、初期のものはほぼ手つかずでした。
それで、15枚のレコード全集ですので、毎日1枚、約2週間の「モーツアルトざんまい」の日々を送ることにしました。

以前も楽しみながら聴いたのですが、今回更に臨場感にあふれた演奏を聴くことができ、聴くほどにこのアンプの音を気に入りました。
「一粒で2度おいしい」というお菓子のキャッチコピーを思い出すような、まさに2度おいしい思いでいます。
(1枚のレコードを、1度目は300B真空管アンプで、2度目は金田風アンプで)

金田風アンプ No.270の製作 ⑧

最近はレコードを鑑賞する時はいつもNo.270にスイッチを入れています。
以前にも書きましたが、清涼感にあふれた再生音で、低音の豊かさ、高音の冴えかえりが素晴らしく、全体として耳に心地よい音を奏でてくれて、とても気に入りました。
この再生音は、このバッテリードライブハイブリッドアンプに備わった、他のアンプには求め難い貴重なものと思っています。

さらに、金田風アンプに共通した音像が明瞭なことはこのアンプも例外ではなく、各楽器の位置もよく分かります。
ある人のブログに、金田式アンプで聴くと演奏者の位置が「30cm間隔で分かる」とありました。
私の駄耳ではそこまでは聞き取れないものの、「今そちらからフルートが。続いてこちらからクラリネットが」などと、楽器の位置の移り変わりを聞き分けられ、レコード鑑賞の新しい楽しみとなっています。
まさに「クセになる」再生音を聴かせてくれて、しばらくこのアンプの魅力から逃れられないようです。

ただ、これも前に書きましたが清涼な再生音とはうらはらに、アンプ自体の発熱は相当なものです。
とくに、ヒーター用のレギュレーターの発熱がすごく、そのままでは触り続けられない熱さです。
小型の放熱器を付けてみても、何度かサーマルシャットダウン機能も働き、まさに焼け石に水、効果は望み薄です。

次に考えたのは放熱器をより大きくすることと、レギュレーターに入力しているバッテリーからの16Vを少しでも下げる工夫です。
プラスとマイナスの回路それぞれに1.5Ωのセメント抵抗をつけ、入力電圧を合計14V程度に下げることにしました。
このレギュレーターは入出力電圧差がきわめて低いので、電圧差1.4Vでもうまく働きそうです。
この試みはうまくいったらしく、放熱器は指を触れ続けることができるほどになりました。
サーマルシャットダウン機能も現在のところそれが働くことなく安定しています。
ただ、こんどはセメント抵抗が熱いです。

ところで、某巨大掲示板をのぞいてみたところ、「No.272(No.273)のバッテリードライブDAC」について「2段目の2SA970を指で触ると数秒も辛抱できないほど」の熱さだとの投稿に目がとまりました。

No.272の真空管アンプ部は、このNo.270とほぼ同じ回路なので念のため本機も確かめてみました。
すると、イコライザーもラインアンプも全ての2SA970が熱くなっています。
今まで真空管やレギュレーターの発熱に気を取られ気づかなかったことでした。

投稿をきっかけに様々な議論が展開される中で、解決策も示されています。
幾つかの策の中でこれはと思ったのは、アイドリングを8mAに絞り、2段目定電流の帰還抵抗を高くする、次にレベルシフトツェナーを入れるというものでした。
この解決策を本機にも適用したところ2SA970の熱さはおさまりました。出力される再生音にも問題は認められません。
良き解決策をいただいてここにも助かった者がいることを記し、感謝したいと思います。

金田風アンプ No.270の製作 ⑦

前回課題であった「イコライザーIVCの調整」を含めついに完成しました。

今回もささやかですが初心者の私には考えも及ばない、乗り越える必要のある難問がいくつかありました。

それは、結果としては「イコライザーIVC基板」の2SK43の交換と、20Pディップマイカの追加ということでした。

SAOCのTr3の2SK43を最初はランク6のものにしていました。
このブログの何回か前に紹介した、大昔に手に入れた金足のものです。
それに出番を与えようとしたのですが調整ボリウムの範囲を越えて調整ができませんでした。
そこで別に持っていたランク3に付け替えたところ、うまくいきました。

その調整の最中、調整ボリウムを触ると、ブーンという音が聞こえたりします。
これはもしかして発振?と思い、手持ちのディップマイカから20Pを選んでドライバー段(2SA970)のBC間に追加しました。
Tr1、Tr2に付けたり外したりしていろいろと試し、最終的にTr1側を残すことで好結果が得られたように思います。

それと、「MJ無線と実験」の2021年2、3月号の記事*を見ると、入力部にイコライザーIVCは56Ω、ラインアンプ&ヘッドフォンアンプに5.1KΩが採用されています。
(*「Nutubeハイブリッドプリアンプ&パワーアンプ」)
早速それを見習い、イコライザーIVCに56Ωを導入したところ、アンプの安定に効果がみられました。

こうして、No.267パワーIVCに接続しレコードを再生すると、とても感じのよい再生音がでてきました。
現在常用しているNo.257プリIVCは、くっきりはっきりとした再生音で、そのぶん解像度も高いように感じています。
それと比べると、傾向としては柔らかい落ち着いた再生音のように思われます。
もちろん解像度も十分あり各楽器の位置も明確で、低音はこちらの方が若干分厚いようです。

それならと、ブルーノワルターのレコードをいくつか聞いてみました。
ワルターの録音はステレオ初期だからか、全般的に低音部がこもり気味でやや解像度に欠けるという印象を持っているので、それをどう再生するか確かめてみたかったのです。
結果としては、解像度はそのままですが低音がより豊かに演奏されていて、魅力的な再生音だと感じました。

ところで、このアンプは清涼感いっぱいの再生音とはうらはらに、とても熱いので夏向きではなさそうです。
特に、「+12.6Vレギュレーター」のNJM2389Fの発熱はすごく、手持ちの放熱器を付けてみたものの、これでも足りないもっと大きな放熱器が必要ではないかと思うほどです。
雑誌記事の写真では全く放熱の用意がされていませんが、このまま使用されているのでしょうか。

さて、ワルターのLPに続いて、フリッチャイの「ウィーンの森の物語~ウィンナ・ワルツ、ポルカ集」を聴きました。

このレコードのB面の最初にはヨハン・シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」が収められています。
この曲、導入部でバスドラムが鳴ります。他の指揮者の録音ではバスドラムはないので、最初に聴いたときは「あれっ」と思いましたが、今ではバスドラムが鳴らないと物足りなく感じるほど、おさまるべきところにおさまっています。
また、他の演奏では殆ど聞こえないフルートやピッコロの音が前面に出てきて、楽し気に演奏を繰り広げます。
まるで、鼓笛隊の行進を目の前にするかのようで、それを楽しみにこのレコードをよく取り出します。
このアンプ、フルートやピッコロを本当にそれらしく再生します。

フェレンツ・フリッチャイは、独グラモフォンで活躍し将来が期待されていましたが、病気のため48歳の若さで亡くなったとか。
スター指揮者を失った独グラモフォンは、EMIにいたカラヤンをヘッドハンティングして後継にすえました。
その後はご存知のとおり、カラヤンは独グラモフォンに「帝王」として君臨するのです。
「歴史に『もしも』はない」と言われますが、もしもフリッチャイが長生きしていたなら、クラシック界の地図も大きく様変わりしたのではと思ったりします。

金田風アンプ No.270の製作 ⑥

調整に入りました。

記事の記述に従って、まず「ラインIVCの調整」。
+32VとTr2(A970)のB間の電圧はR、L基板とも8V強で、記事とは外れていますがそのまま調整を進めVB1(もう片側のA970の)を5Vに合わせました。

次にSAOCの配線を戻し、SAOCのVRで出力オフセット電圧V0を0Vに合わせます。
ところがここで、片方の基板のSAOCが働いていないことが分かりました。
SAOC回路内の半導体の問題かと、一個ずつ外して測定するとC2240が無反応、どうやらこの素子が問題のようです。
基板にセットする際は簡易測定で動作確認しています。なにが原因だったのでしょうか。
片側は正常に動作しているので、取り付けメモを参照し同じhfeのもので交換しました。

もう一度こちらの基板を測定しなおすと、今度はSAOCも働きV0を0Vに合わせることができました。
その後、出力段アイドリング電流I₀も両基板とも15mAにすることができ、意外とスムーズに調整が済みました。

続いて「イコライザーIVCの調整」です。
+32VとTr2(A970)のB間の電圧は、こちらはR、L基板とも10.05Vと記事の通り。
これは良いことだと、気分も新たにVB1(もう片側のA970の)を10Vに合わせました。
続いて、「調整用VICプラグ」にIdss約5.5mVのK43を付けたので、Icを3.5mVに合わせました。
その後の出力オフセット電圧V0も両基板とも0Vに合わせることが出来、ここまで順調に進んだみたいでした。

しかし、調整の最後ともいうべき出力段アイドリング電流が調整できないのです。
ab間に接続している10Ωの端子電圧が片側は70mV、もう一方は80mV程度しか上がりません。
念のため、各部の電圧を調べると、増減はあっても記事の測定値に準じた値です。
ただ、Tr2のコレクタの値が、記事ではほぼ3V程度なのが、25V前後と大幅に違っていました。
ここは6111との関係で3V程度でなくてはならないとは事前勉強の知識です。
更に、SAOC各部の値も全てかけ離れています。
それなのに、イコライザーIVCのSAOCのVRを動かし、ラインIVCの出力オフセット電圧V0を0Vにすることができるのは、なんとも不思議です。

それでも、ラインIVC出力オフセット電圧V0を0Vにできるのだからと、無謀にもNo.267アンプにつないでみることにしました。
カートリッジVICとの調整も済ませ、No.267アンプのスイッチを恐る恐る入れると、すぐにプロテクターのオレンジLEDが点灯します。
「それは当然のこと」と思いつつも、No.270のゲインVRをMAXにしてからSAOCを調整するなどするうちに、なぜかプロテクターが働かないポイントが見つかりました。

そこで、早速レコードをかけるという、更なる無謀な試みをしました。
それが、なんと音がでたのです。
最初は、キンキンした薄っぺらな音でしたが、10分もするとこのままずっと聴いていたい衝動にかられる音楽を演奏しだしました。
でも、そこでスイッチを切りました。
アンプが完成してないので、このままでは何がおこるか分かりませんから。

というのが、現況です。

上の写真は配線も汚くお恥ずかしい限りです。
ブログではさらりと組み立てているようですが、何度も部品や配線を付けたり外したりしています。
そうしているうちに、基板が汚れ、また半田ランドが熱で剥がれたりしたので、もう一度組み立て直しています
ですから、一部基板を取り外した状態です。

金田風アンプ No.270の製作 ⑤

内部の配線作業を進めています。

真空管を使った金田風アンプは初めてで、ついキット製品で作ってきた今までのアンプと比べてしまいます。
キット製品は初心者も組み立てやすくと、半田ポイントも間隔をゆったり目にしてつくられています。
それとの比較なので、どうしても今回のアンプは少し配線が込み合っているように感じます。

自製のプリント基板なので融通をきかせればよいのでしょうが、AT-1Sサイズの本家基板のコピーを心がけている分、半田ポイントが集中しているところも何か所かでてきました。
これは調整のとき半田のこて先を当てるのに少々神経を尖らせるところも出てきそうです。

金田風アンプ No.270の製作 ④

この数日、頑張ってサブミニチュア真空管、Tr、SEコンデンサーを取り付けました。
Trのペア組みなどもしたので、予想したよりも時間がかかりました。

金田風アンプ No.270の製作 ③

サブミニチュア真空管、Tr、SEコンデンサー以外の部品を取り付けました。

(写真撮影後、1か所抵抗の付け間違いに気づき現在は修正しています。+12.6Vレギュレーターも2台にしています)

ところで、「No.267の製作 ⑧」で「ベーム指揮のモーツァルト『ポストホルン・セレナーデ』」を愛聴盤として紹介しました。
実はジョージ・セル指揮の演奏も気に入っています。
今回No.267を通して改めて聴いてみると、第一楽章のバイオリンの独奏部分、トランペットの演奏部分などをはじめとして、より鮮明に聞えてきて、それを楽しんでいます。

ということで、暇を見つけてはこのレコードを取り出し繰り返し聴く毎日となっています。

金田風アンプ No.270の製作 ②

ケースの穴あけが済みました。

このあと、オイル汚れなどをふき取り、ミッチャクロンを吹き付ける予定です。

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そして、上記作業を済ませ部品を取り付けました。

いつもながら、金田風アンプの風貌になりました。