金田風アンプ No.270の製作 ⑦

投稿者: | 2021年7月5日

前回課題であった「イコライザーIVCの調整」を含めついに完成しました。

今回もささやかですが初心者の私には考えも及ばない、乗り越える必要のある難問がいくつかありました。

それは、結果としては「イコライザーIVC基板」の2SK43の交換と、20Pディップマイカの追加ということでした。

SAOCのTr3の2SK43を最初はランク6のものにしていました。
このブログの何回か前に紹介した、大昔に手に入れた金足のものです。
それに出番を与えようとしたのですが調整ボリウムの範囲を越えて調整ができませんでした。
そこで別に持っていたランク3に付け替えたところ、うまくいきました。

その調整の最中、調整ボリウムを触ると、ブーンという音が聞こえたりします。
これはもしかして発振?と思い、手持ちのディップマイカから20Pを選んでドライバー段(2SA970)のBC間に追加しました。
Tr1、Tr2に付けたり外したりしていろいろと試し、最終的にTr1側を残すことで好結果が得られたように思います。

それと、「MJ無線と実験」の2021年2、3月号の記事*を見ると、入力部にイコライザーIVCは56Ω、ラインアンプ&ヘッドフォンアンプに5.1KΩが採用されています。
(*「Nutubeハイブリッドプリアンプ&パワーアンプ」)
早速それを見習い、イコライザーIVCに56Ωを導入したところ、アンプの安定に効果がみられました。

こうして、No.267パワーIVCに接続しレコードを再生すると、とても感じのよい再生音がでてきました。
現在常用しているNo.257プリIVCは、くっきりはっきりとした再生音で、そのぶん解像度も高いように感じています。
それと比べると、傾向としては柔らかい落ち着いた再生音のように思われます。
もちろん解像度も十分あり各楽器の位置も明確で、低音はこちらの方が若干分厚いようです。

それならと、ブルーノワルターのレコードをいくつか聞いてみました。
ワルターの録音はステレオ初期だからか、全般的に低音部がこもり気味でやや解像度に欠けるという印象を持っているので、それをどう再生するか確かめてみたかったのです。
結果としては、解像度はそのままですが低音がより豊かに演奏されていて、魅力的な再生音だと感じました。

ところで、このアンプは清涼感いっぱいの再生音とはうらはらに、とても熱いので夏向きではなさそうです。
特に、「+12.6Vレギュレーター」のNJM2389Fの発熱はすごく、手持ちの放熱器を付けてみたものの、これでも足りないもっと大きな放熱器が必要ではないかと思うほどです。
雑誌記事の写真では全く放熱の用意がされていませんが、このまま使用されているのでしょうか。

さて、ワルターのLPに続いて、フリッチャイの「ウィーンの森の物語~ウィンナ・ワルツ、ポルカ集」を聴きました。

このレコードのB面の最初にはヨハン・シュトラウス1世の「ラデツキー行進曲」が収められています。
この曲、導入部でバスドラムが鳴ります。他の指揮者の録音ではバスドラムはないので、最初に聴いたときは「あれっ」と思いましたが、今ではバスドラムが鳴らないと物足りなく感じるほど、おさまるべきところにおさまっています。
また、他の演奏では殆ど聞こえないフルートやピッコロの音が前面に出てきて、楽し気に演奏を繰り広げます。
まるで、鼓笛隊の行進を目の前にするかのようで、それを楽しみにこのレコードをよく取り出します。
このアンプ、フルートやピッコロを本当にそれらしく再生します。

フェレンツ・フリッチャイは、独グラモフォンで活躍し将来が期待されていましたが、病気のため48歳の若さで亡くなったとか。
スター指揮者を失った独グラモフォンは、EMIにいたカラヤンをヘッドハンティングして後継にすえました。
その後はご存知のとおり、カラヤンは独グラモフォンに「帝王」として君臨するのです。
「歴史に『もしも』はない」と言われますが、もしもフリッチャイが長生きしていたなら、クラシック界の地図も大きく様変わりしたのではと思ったりします。