金田風アンプ No.267の製作 ⑨

金田風アンプNo.267は、手持ちのレコードから更に奥の深い演奏を聴かせてくれるのが面白く、毎日のようにスイッチを入れています。

そのうちの1枚は、ズービン・メータ指揮ロスアンジェルスフィルハーモニーの、サン・サーンス「 交響曲第3番オルガン付き」です。
今まで手にしたアンプでは、終楽章の最後、オルガンの重低音とオーケストラの演奏が重なるあたりで音がつぶれ気味に聞こえ、少々気にかかるところでした。
このNo.267アンプはその部分をしっかりと再生します。気にせず聴くことができるようになりました。
(これはNo.257プリアンプの功績かもしれません)

ところで、出力段に使っているPOWERADDの給電時間が意外と短かいようです。
休日などに一日中アンプを動作させていると、夜には残量が10%を切ることもあります。
そこで、記事で紹介されているリチウムイオンバッテリーによる電源を、手持ちの同規格のバッテリーで導入することにしました。

すると、驚いたことに、給電時間より何より、再生される音が変わりました。
POWERADDで、私にはやや刺激的に感じられたバイオリンなど弦楽器の音が、まろやかになりました。
加えて管楽器も一段と柔らかな音になったように感じられます。
私の駄耳の感想ですが、弦楽器や管楽器の音が変わると、演奏全体の印象も変化し臨場感が更に増したように思われます。

先達の方々のブログで、「直列に数十個つないで給電したナショナルのネオハイトップ単1乾電池。水銀0になって音が変わった(前の製品の方が良かった)」などの記事を読むと、失礼ながらそんなものかなくらいに思っていましたが、今回電源が変われば音も変わることを身をもって体験しました。

比較するのにNo.239アンプしかなく、好みを交えた私個人の感想を許して頂ければ、いまNo.267アンプはそれ以上と思えるのは、やはり電源の違いもあるのでしょうか。

給電時間も長時間になりました。どれほど持つのかはまだ測っていませんが、少なくとも数日は使えそうです。
POWERADD自体は悪いものではなく便利に使えるので、今後は予備電源として使おうと思います。

金田風アンプ No.270の製作 ①

No.267 SIC MOS-FET パワーIVCが完成、次は予定通りNo.270 バッテリードライブ 真空管MCプリアンプの製作を始めることにしました。
ただし、No.270に続くNo.272の記事で発表された改良版に基づいています。

ケースはパネル印字を完了し、あとは穴あけ作業が残っています。

先日そのプリント基板が、注文していた中国の工場から到着しました。

実は、雑誌の基板配線図にはいくつかミスがあります。
一つは、No.270の図23、24の+40Vラインの接続ポイントで、これはNo.272の記事で訂正されました。

もう一つは、6111のカソードが基板配線図上で左に1コマずつずれているというもの。
これは、イコライザーIVC基板、ラインIVC等基板配線図の両方でありました。
更に、No.272(9月号はNo.273)の、改良版を含めた3枚の基板配線図にも同じミスがあります。

ずれを修正して基板化したもの。多分大丈夫かと。

おそらく最初の基板配線図を作成したときのミスが、そのままコピーされていったのでしょう。

少し心配なのが、作品を世に問う最後の砦である編集部がノーチェックらしいことです。
編集部が頑張らない以上、製作するものが「自己責任」でしっかりチェックするしかなさそうです。

チェックつながりで付け加えると、アンプ部とSAOC部とを結ぶジャンパー線ですが、No.270、272でラインIVC等基板に見当たりません。
しかし、よく目を凝らすとNo.270、No.272ともグレー地にうっすら白い点線の跡が確認できます。
なにか探し物ゲームで「みつけた」みたいになりそうですので、この話題はこのへんで。

さて、抵抗やコンデンサーなども各基板ごとに分類しながら準備中です。
ニッコームに加え、OSコン、PhilipsのCBBコンデンサーなど、指定の部品が入手しにくくなっています。
部品のストックがある方に比べ、私のような金田アンプ初心者の一番苦労するところです。

金田風アンプ No.267の製作 ⑧

アンプが完成しました。

No.239アンプの完成に約3年を要したことを考えると、今回はとても早く完成できました。
前も同じことを書いたようですが、一度通った道で、殆ど迷うことなく製作できるようになったからでしょうか。
電源部がないのも大きいことです。

ただ、やはり完成までに一山越える必要がありました。
今回も私には予想外のことが起こり、原因が分かるまで右往左往しました。
先達の方々には幼稚なトラブルを披露して申し訳ないですが、メモとして記したいと思います。

それは、アイドリング電流を調整する時の出来事です。
スピーカー端子につないだテスターの表示も確かめながら基板上のVR2を回しますが、いくら試みても電流計の針が50mAから上がりません。

もしかして発振か、と思いましたが、基板で熱くなっている部品もなさそうで、保護回路が動作する様子もありません。
金田アンプの組立経験も乏しく、なにより根本的に電気的知識欠如の中、思いつくままにあれこれ試みました。
定電流回路の抵抗値の変更や、初段2SK117BLを別のIdss値のものに付け替えるなどなど。
しかし、何をやってもアイドリング電流は50mAで頭打ちです。

音は出るのかと、恐る恐るNo.257プリアンプとスピーカーをつないでレコードをかけてみると、音は出ました。
でもそれは、高音はまだしも、中、低音は割れていて、音楽鑑賞という状態ではありません。

こうして数日の間、ずっと思案していましたが、「分からないときは原点に立ち返ろう」、そうすることにしました。
原点、つまり私の場合、金田風アンプの製作は製作記事の回路図、基板配線図をもとにPCBEでプリント基板用の原図作成から始めます。
原図ができたら、次にPCBEの確認図印刷を行い、印刷された確認図に各部品の記号を書き込み、図上で一度配線作業をします。
そして、回路図と確認図の双方をマーカーでチェックしながら照らし合わせて、間違いがないかよく確認します。
このように作業を終えて、原図が回路図を正確に写し取っていると確認出来たら、プリント基板業者に発注します。

そうしてできた確認図、組み立て後仕舞っていたそれを取り出し本体基板と見比べ眺めているうちに、気付きました(!)。
保護回路の過電流検出のところで、0.1Ωと1KΩの取り付け間違いをしていました。

次の写真は「No.267の製作 ②」に掲載した時のものです。

これか、と思い、早速修正すると、ドンぴしゃり、150mAをクリアすることができました。

修正後の基板です。

基板組み立ての際、部品の取り付け直前まで「上下で対称だな」と思っていたのに、どう思い違いしたのでしょう。
金田先生の「保護回路は決してトラブルがあってはならない回路である。似たような回路が並んでいるので、Trの型番、電極に十分注意して配線する。配線後には最低2回チェックする」との言葉を今一度かみしめました。

こうして音楽を奏で始めたNo.267アンプの姿です。
写真では青色LEDがともっているだけの、うしろにタンノイらしいスピーカーを背負ったいつもの風景です。
もちろん、まだタンノイにつなぐ勇気がないので、写真には写っていない床に置いた小型スピーカーで確かめています。
No.239アンプも素晴らしいのですが、バッテリードライブだからでしょうか、さらに解像度が上がったように思います。

アンプ完成後いろいろとレコードを聞いています。その中でもベーム指揮のモーツァルト「ポストホルン・セレナーデ」を一段と気に入りました。
モーツァルトが子どものころ、父親と諸国を馬車で旅する中で聴いた郵便馬車のホルンの音、それを懐かしく思い出しながら作曲したのでしょうか。モーツァルトの作品の中でも楽しそうな曲調がとても親しみ深く、彼の人間味に触れる思いのする作品です。
第6楽章でポストホルンの音が右手奥の方から聞こえてくるあたり、No.267アンプではホルンの位置もより鮮明に感じられます。

そして金田先生の試聴会での定番、ストラヴィンスキー「火の鳥」。
こんな小型のスピーカーからと思うほどの分厚い打楽器の音、そして煌びやかな弦、管楽器の音色にNo.267アンプの実力を実感しました。

金田風アンプ No.267の製作 ⑦

ケースを再度組み立て、機構部品を取り付けました。

どの部品も職人さんの熟練の技が感じられる正確でち密な仕上がりです。
有難いことにそれらの部品に助けられて、私のぎこちない工作の跡は目立たなくなり、いかにも金田風アンプらしくなってきました。

そして基板をセットしてみました。

一応SCT3030ALも取り寄せました。しかし、今回は出番がなさそうです。

金田風アンプ No.267の製作 ⑥

ケースの穴あけができました。

写真で見ると結構な出来に見えるものの、近くで見るとアラばかり目立ちます。
我ながらどうしてこんなにヘタなのかと思うくらい、横一列に揃えてドリルで穴を開けたつもりが、微妙に、時には僅かにズレています。
自分で使うものなのでまあいいかと納得しているのですが、工作の上手いヘタも天性のものなのでしょうか。

実はこのケース、「金田風アンプ UVプリンターでケースパネル印字」(2019年9月7日)で紹介したものです。
しかし、写真のように、あったはずのレタリングがありません。
そのわけとは。

紹介の後、仕舞っている間の傷やヨゴレを懸念して、ラップフィルムを巻いて保管していました。
今回取り出してラップフィルムを外すと、なんと表面が少しまだら模様になっています。
印字の際インクの定着をよくするために、「ミッチャクロン」を吹き付けるのですが、それとラップフィルムとの相性が良くなかったようです。
そこで、後のことも考えずラッカースプレーをかけたところ、一部の文字に崩れを生じてしまいました。

ということで、ラッカーうすめ液(シンナー?)で全部ふき取ったというわけです。

近日中に大阪天満橋のCo-Boxに出掛けて、再度印字することとなりました。

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といっている間に、時間ができましたのでCo-Boxに行ってきました。

今回は今までと違い、穴あけをした後に印字するので、印字のズレもあるのではと心配していましたが、なんとか大丈夫でした。
裏面パネル左下の日付は印字した日のものでなく、今回の印字に合わせて原稿を見直した時のものです。

今までは係の人に「全部お任せ」でしたが、今回は全て自分で印字しました。
Co-BoxのHPにUVプリンターの操作説明の動画が載っているので、それをもとに操作手順を箇条書きにし、そのメモを頼りにやってみたのです。
(HPには「UVプリンター使用手順」というPDFファイルも用意されています)

金田風アンプ No.267の製作 ⑤

SCT3060ALを6個入手しVGS測定を行いました。

皆さんそれぞれ創意工夫をこらして測定されていると思います。
私は、次の写真のようなイメージで測定しています。

金田先生の「IDは発熱により、測定中に増えてくる。小型の放熱器をFETに接触させるだけでIDは安定する」という記事から一計を案じ、100円均一ショップで挟口51mmという大型のダブルクリップを入手し使っています。
どんな具合か横に倒して撮影してみました。

値の低い順で3.76が2個、3.77、3.78、3.91、4.03が各1個という結果を得ることができました。
3.76の2個と、3.77、3.78の各1個を組み合わせた2ペアとすることにしました。

金田風アンプ No.267の製作 ④

ドライブ段用と出力段用のバッテリーが用意できました。

コードの長さはドライブ段は60cm、出力段はPOWERADDが大型なので50cmとしました。

ドライブ段用のバッテリーは、以前No.257で製作したものと同形式なので、やや手慣れた感じの作業でした。
一方、出力段用のものは、これは半日を費やしてしまいました。

一番のネックが、DCプラグの黒樹脂カバー部に、30芯コードを2本通す作業です。
今回手に入れた内径2.5mmのDCプラグのジャバラ部に開いている穴は直径4mm。
1本目を穴に通したあと2本目が問題で、差し込んでもなかなか通ってくれません。
コードをじわじわ押したりひねったりするのですが、一度に押し込める分量は0.1~0.2mmほど。いつになったら終わるのかという辛抱のいる作業です。
出口の穴の方からのぞいて、奥にコードの先が見えるようになったら小型のラジオペンチの先を差し込んで引っ張り出します。
しかし、一生懸命探ってもなかなか届かず、悪戦苦闘の末にカバー部の出口部分をぼろぼろにしてしまったりします。

上の写真はそうしてようやく2本のコードを引っ張りだせたのですが、良く見るとジャバラ部が裂けてしまって失敗作となりました。
こんな苦労の末にやっと完成した作品をごらんください。
製作記事の写真を見本に撮影してみました。

金田風アンプ No.267の製作 ③

No.267のIVC基板がほぼ組みあがりました。
No.239ではディップマイカで済ませた位相補正の20pも今回はSEコンデンサーとしました。

この基板、使っている抵抗は少なめですが、すべてニッコームとすることができました。
現在、ニッコームで揃えようとすると、「若松通商」ではほぼ揃えられなくなっています。
「若松通商」も欠けている抵抗値をフラット電子製で用意してくれてはいます。
それを承知で敢えて、秋葉原に行った時あちこちのショップを当たり、またネット通販を探して集めてみました。

続いて、SCT3060ALのVGS測定と、ケースの穴あけ作業、そしてバッテリーのコネクタの結線作業を進めていきます。

「テクサン」のささやかな思い出

双信電機のSEコンデンサーの生産終息が伝えられ、それと時期をあわせるかのようにテクニカルサンヨーのHPも見れなくなりました。

今日はちょうど月末でしかも年度末。過ぎ来し方を少し振り返ってみましょう。
今を去る数十年前の、「テクサン」の思い出話。
「テクサン」の店舗は五階百貨店前、岡本無線前と移りましたが、創業は今のシリコンハウス共立のあたりではなかったでしょうか。

それがどこか、今はぼんやりとしか思い出せませんが、確か階段を上がった2階の、奥に細長く、北向きの窓からは淡い光も差し込むこじんまりした店構えだったように思います。

当時の日本橋電気街には多くの部品屋さんが並び、その中にあって新興の「テクサン」は、常に他に先駆けて話題の商品を品揃えしようとする、意欲的で活気が感じられる店でした。
ずっとあとに「おばちゃん」と呼ばれるおねえさんは30代前後だったでしょうか、店番をしていました。
ある年の暮、私は何人ものお客に交じって、ショーケースを眺めていました。
双信のケースマイカに1個数万円の値札が付いていましたが、私が金田式アンプに入門するのはだいぶ先ですから、その時は値段に感心しながら見ているだけです。

しばらくすると、スーツ姿の若い男性がやってきて、店の奥のおねえさんと笑顔で話しはじめました。
なんとなく聞こえてくる話から、男性はどうやら双信のセールスマンで、この年末商戦で双信も好業績を収めたことのお礼を述べに来たらしいと分かりました。
そんな話を聞いていると、無関係なこちらもなにか豊かな気分になりました。

おねえさんもセールスマンも店のお客も、そして私もみんな若く、日本橋電気街も人で溢れかえっていた時代のお話です。

「テクサン」での買い物で思い出深いものは、発売されたばかりの2SK43(その時はランク6しか手にいれられませんでした)を数十本買ったことです。
今でも部品箱に残っているK43、印字も赤で足も金メッキされていて現在手に入るものとはだいぶ様子が違います。

「テクサン」の実店舗は最後は岡本無線前に移り、若かったおねえさんは「おばちゃん」になり、かかってきた電話に「はいテクニカルです」と応対する声も今となっては懐かしい。
「おばちゃん」、お元気ですか。

金田風アンプ No.267の製作 ②

「DC、過電流検出」と「制御部、バッテリーチェック」の各保護回路基板に部品取り付けが済みました。

ところで、少し前に「双信電機」からSEコンデンサー生産終息の社告がでました。
今まではぜいたくのようにも思えて、イコライザー回路以外ほとんどディップマイカで済ませていたのですが、これは大変とポケットマネーを投入すべく「若松通商」のHPを開きました。
幸いなことに私が欲しいSEコンデンサーは現時点でほぼ残っているようです。
それでも一部は在庫が極めて少ないか、0個のものもあります。購入を考えた100Pは0個でした。
0個のうち「入荷待ち」が付いているのは購入が期待できますが、表示がないのはそのまま販売終了となるのか気がかりです。

(双信電機の社告抜粋)************
2.生産終息理由
SEコンデンサの構成部材となるガラスペーストの製造元より、生産終息とする旨の通達がございました。
対象のガラスペーストには環境負荷物質(Pb、Cd)が含まれており、世界的な環境負荷物質排除の動きの中での代替品入手は困難である事、及びSEコンデンサの需要も大幅に減少しておりますことから、生産継続困難と判断させていただきました。
3. 生産終息のスケジュール
最終ご発注期限 : 2021 年 6 月 30 日
最終納入予定日 : 2022 年 3 月 30 日
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若松通商では最終発注期限を2021年4月30日迄としているようです。ご注意ください。

そういえば、PhilipsのCBBコンデンサー1μf、若松通商のHPから消えています。